遠藤農園
みんなで耕し、みんなで食べる。
家族の農園に、いらっしゃい。
見渡す限り田畑が広がる池田町でも、
時代とともに農業の担い手が減っているといいます。
そんななか、代々家族で農園を営んでいるのが遠藤農園さんです。
水稲だけで30ha(ヘクタール)、小麦20ha、大豆25haと広大な田畑の管理をし、
美味しいお米や麦、豆を全国の食卓に届けています。
家族5人が中心となり田畑を耕作する。赤い帽子とエプロンに長靴がトレードマークのお父さん遠藤誠さん、奥様の花子さん、長男の智司さん、お嫁さんの和未(カズミ)さん、お母さんの姪の安田実智代さん。繁忙期には、今春から高校1年生の長女・次女も手伝いに入る。遠藤家の手には、自分たちで育てた米、豆、そして自作の米でできた酒。
1年を田畑と一緒に生きる。
春、田んぼの土作りから始まり、
田植え、小麦刈り、大豆撒きで夏を迎え
秋の米の収穫から、小麦撒き、大豆刈りで冬が訪れる。
家族の1年は田畑の育ちと共に過ぎていきます。
遠藤農園の米づくりに欠かせないのが、池田町が誇る「水」にあるそうです。
- 誠さん
- ここらの水は昔からうまいと言われて、春日(伊吹山の北東麓にある春日地区)から流れてくる水は揖斐川水系に比べて3度も低いんやわ。その違いが、あるんやわな。
- 智司さん
- 揖斐のさざれ石(※)が有名でしょう? このあたりの水は石灰の性質があるんです。ダムもないので、余計に水が美味しいと言われています。
※揖斐川町春日には、国家「君が代」の歌詞になったと言われる「さざれ石」がある - 花子さん
- うちの米しか食べとらんで、食べ比べて初めて分かるんやけどね。私も嫁にきたばかりのころ、実家に帰ってご飯を食べたら思わず「まずい!」と言って母に怒られたことがあったもんねぇ。
- 和未さん
- お義母さんは近所のお友達と自作の豆で味噌作りもしていますし、自作の大麦を麦茶にして自家焙煎もしています。子どもにも与えやすいですしね。自家製の米粉をつくって、餅つきの取り粉にしたり、シフォンケーキもつくってるんですけど、けっこう評判ですよ。
- 花子さん
- そうね。自給自足みたいなもんです、我が家は(笑)。
聞いているだけで健康になれそうな遠藤家の食卓。
米だけでも7〜8種類の銘柄を作り、農協・個人へ販売。 米、小麦、大豆と、土つくりから刈取りまで全てを5人で行うため 冬の雪の日以外は、毎日田畑の仕事があるそうです。
ガラスの面のような田んぼをつくる技。
昨年、列車の運転士の仕事を辞して、 農園に専念することにした長男・智司さん。
幼い頃からお祖父さんの手伝いで、田畑の仕事を見て育ったため、 ひと通りの仕事は器用にこなし、今は一家の大黒柱として農園を運営しています。 そんな智司さんですが、未だにどうしても 父・誠さんに敵わないことがあるとか。
- 智司さん
- 田植え前の準備で代掻き(しろがき)という田んぼを慣らす作業があるんですが、その仕上げは親父が断然うまいんですわ。水を張った田んぼがガラスの面のようにスーッと通る。丁寧な仕事をしないと、それはできません。
- 花子さん
- お父さんね、この辺りでは "代掻きでマコさんに敵う人はいない"って言われてるんですよ。
- 智司さん
- 仕事が悪いと、水保ちが悪くなるんですよ。この辺りの土は砂泥で、しかもダムもないから水は少ないほうで。田んぼの水を3日保たせられるには、丁寧に掻いたらないかんのです。
- 実智代さん
- そればっかりは、経験でしか上手くならないからね。
- 誠さん
- "農は見て覚える"と昔からよく言われとったでなあ。
- 花子さん
- いまの時代は見て覚えろだけじゃ若い人は育たないの、お父さんの頃と違うんやで。1から10まで教えていくほうがいいの‼
- 誠さん
- まあ、俺は怒られるばっかりやわ……
- 一同
- (笑)
お母さんとお父さんの掛け合いに、家族がクスクス笑う。
同じ釜の飯を食う仲間という以上の、家族だから息の合うこと、 意見できること、お互い様で助け合えることがある。
作り手たちの技と想いが、作物一粒一粒に伝わって 遠藤農園の米ができあがっていくのです。
人が集まる家。繋がる場所。
お嫁さんの和未さんには年に1度の大仕事があるとか。
年の暮れ、遠藤家の庭には総勢20名ほどの人が集まり、餅つき、バーベキューをするそうです。
今年も1年無事に過ぎたね、と集まる皆で語りあう。
まるで故郷に帰ってきたような安心感があるのが、ここ遠藤家なのです。
- 和未さん
- 12月28日にはそれぞれ家族の友人たちがいろんなところから集まってくるんで、その準備を10日前くらいからするんですよ。自作の餅米、餅のとり粉、あずき、おやつ、ほとんど自前です。
- 花子さん
- みんな集まってくれるで、賑やかでね。ありがたいねえ。それもこれも、自分たちでつくったものだから喜んで振る舞える。
- 実智代さん
- 庭で炭火焼するんです。この日はお嫁さんが一番大変ですよ(笑)。
- 智司さん
- みんな集まってくれるで、賑やかでね。ありがたいねえ。それもこれも、自分たちでつくったものだから喜んで振る舞える。
- 花子さん
- おっさん、おばちゃん、子どもたち、いろんなところから大勢集まるでね。この繋がりができるのが、うちでこの仕事をやってて良かったと思うところかな。
自然の恵と向き合い仕事をし、 自然の恵によって人が集う遠藤家。
家族でつくる米、米が繋げる縁。 ぜひ手にとってみませんか。